約 164,700 件
https://w.atwiki.jp/shareyari/pages/516.html
作者:◆peHdGWZYE. バフ課はいわゆる超法規的機関だった。公には存在し無い事になっている組織のため、 いずれの庁、部からも独立しており、警察法を初めとした多くの国内法に縛られずに活動 する事ができる。 もっとも、警察庁に部屋が用意されているし、それとは別に隊長にも知らされない怪し げな部や庁が上にある可能性もある。 ……まあ、俺の知ったことじゃないか。 会議室から退室したバフ課二班隊長、code シルスクはそんな事を考えていた。 「あー、隊長。もしかして、即行で候補から外された事、気にしてたりするっスか?」 半歩遅れて付き従うバフ課二班副隊長、code ラヴィヨンの質問は的が外れていた。 「んな訳がないだろう。バフ課と表の公的機関の繋がりについて、少し考えていただけだ」 シルスクの思考の出発点には、能力鑑定局からバフ課への異例の要請があった。 その内容とは、次の通りだ。戦闘が行える人材を都合してくれ、一人でいい。 一応、警察組織からバフ課への人事異動には例があるが逆は無きに等しい。 結論から言えば、バフ課はこの要請を受け入れた。 バフ課側からは代償として、協力者となりうる鑑定士を要求した。鑑定の真似事ができ る人材ならバフ課にも居るが、やはり本職の鑑定士を手駒に加えれば捜査でも戦闘でも、 その利点は計り知れない。 互いに人材の貸し借りについて合意し、今回の件に至った訳だが、はっきり言えば能力 鑑定局の利点が少なすぎる。バ課と通称されている組織だが、なんだかんだで鋭い各隊長 達は他の密約の存在を勘ぐっていた。 適した人物を厳選するとはいえ、過剰なまでに保護されている鑑定士を危険にさらすと は、よほどの事に違いないが…… 「まあ何があろうが、戦力が補強されるなら別にいいんだがな」 「た、隊長がそんな事を考えていたなんて……」 妙な所で感激するラヴィヨン。両腕が一瞬震えたのは、思わず拍手しようとした所で堪 えたからだろう。 釈然としないものを感じながらも、シルスクは歩みを速めた。ラヴィヨンは小走りにな る。 「……そこまで意外か」 「え? 隊長、今なにか……」 「ああ、何も言っていないから気にするな」 今回の会議で決定されるのは、能力鑑定実技試験の試験官を務める人物。有力な取引相 手となるのは確実なので、礼儀として隊長、あるいは副隊長格が前提とされたが、一癖も 二癖もある面々のため人選は難航した。 シルスクは能力が発現する気配がないため、鑑定の試験官としては論外。 一班隊長トトは試験官としては、世話を焼きすぎる傾向がある。 三班副隊長シェイドは意欲はあったが、どうも動機が不純らしい。 四班隊長ラレンツアはまともだが、暴走した能力者の処分が主任務である以上、鑑定士 側の印象は良くないだろう…… 多かれ少なかれ、誰を選ぶにしても欠点は見つかるという事だった。 ほとんど、罵り合いに近い意見交換が行われた会議室は、混沌の坩堝と化した。 「どうせ無難な所に落ち着くだろう」 「そうっスよね」 賢明にも途中退室した二班の二人は、やや予定を早めて訓練に向かうのだった。 最後の試練、月並みだが代樹の脳裏に過ぎったのは、そんな言葉だった。 能力鑑定実技試験の試験官は三名おり、その内の二名はすでに鑑定を済ませている。 一人目の試験官はおそらく満点、少なくともそれに近い評価を出してくれるだろう。 二人目の試験官は合格点を出さざるを得ない。悪質な客の対処は、人によって意見が分 かれる点なので過剰な期待は禁物と言えるが。 そして、三人目、つまり最後の試験官は異質の存在だった。 『桜花、準備はできているか?』 『一応ね。代樹の方は? 狙われるのはそっちだと思うけど』 『正直、自信はないが……鑑定だけなら任せてくれ』 手先のみの動作で、二人は互いの状態を確認しあう。 能力鑑定実技試験は鑑定士候補の実力を試すと同時に、守護の仮面の試験も兼ねていた。 つまり、守護の仮面が活躍する場面も試験会場では再現される。 鑑定士に危害を加える危険人物。それが最後の試験官が演ずる役割だった。 意を決すると桜花は危険人物を室内に招いた。 「次の方、どうぞ入室してください」 意外にも控えめなノックの音が二度響いた。 扉を開き、入室してきたのは金髪碧眼の美女だった。皮のライダースーツとかなり行動 的な装いでも、その妖艶さは損なわれていない。だが、深窓の令嬢といった要素が皆無と 言うわけでもなく、容貌相応の繊細さも持ち合わせているように見えた。 その瞳からは冷たい印象を受けるが、それ以上に内面に潜む何かが代樹と桜花をたじろ かせた。 「マドンナ様……でよろしかったですね? どうそ、おかけください」 資料には名前らしきものだけが載っており、姓は記載されていない。ためらいつつも、 桜花は名前だけで呼びかけた。 「ええ、よろしくお願いするわ」 マドンナは会釈すると、軽やかに席に向かって前進した。 『桜花、着席の途中で奇襲が来るよ』 突然、代樹が手振りで送ってきた合図はそんな内容だった。桜花は片眉を上げて驚きの 表情を作ったが、仮面の下の事なので他人には見えない。 マドンナが椅子を引き、腰を屈めたその瞬間、彼女の腕が異様な変貌を遂げた。 指先の刃物化。刹那の間もなく、蛇の頭のように代樹の肩口に襲い掛かる。 明らかに代樹の反応は遅れ、体勢も回避には適さない。為す術もなく、彼の肩が抉られ るかのように見えた。 しかし、耳障りな金属音と共にマドンナの一撃は跳ね返された。 「……読まれていたみたいね。少しあざとすぎたかしら?」 動揺はしていない。むしろ、予期していたかの口調でマドンナは目前の"盾"を見つめた。 彼女の標的であったはずの代樹は、いつのまにか窓際に移動している。 身代わりの盾。これが守護の仮面見習い、桜花の昼の能力だった。 【操作型】と【具現型】を合わせた能力で、半身を覆う盾を具現化すると同時に味方、 あるいは守護対象と認識している人物と自分自身の位置を入れ替える。 「はあぁぁっ!」 鋭く叫びつつ、桜花は椅子と机を踏み台にして、マドンナに向けて盾を押し出す。 マドンナは正面から迎え撃つ愚を冒さなかった。後退して隙をうかがう。現時点で桜花 の攻撃は、位置でも重さでも相手を上回っていた。 「後退……でも、甘い!」 桜花はさらに突撃すると見せかけて、盾を左側に逸らし、盾の裏で用意していたスタン ロッドを突き出した。 「そのセリフは十年早いみたいね」 奇襲に対する反応は異常に早く、正確だった。マドンナは文字通り、刃と化した手刀で スタンロッドを破壊しようと試みる。 桜花は寸前でスタンロッドを引き、手刀を回避すると二段突きの要領で再び攻撃を繰り 出す。しかし、それも避けられる。 桜花とマドンナの攻防は続く。両者が技巧を尽くして、相手に一撃を加えようと試みる。 何度か互いの攻撃が空を切り、やがて均衡を破ったマドンナの一撃が桜花に迫るも、そ れは盾に弾き返された。 「五年、とだけ訂正しておくわ」 容易ならざる相手、と認めたのか一度距離を取りつつも、マドンナはそんな事を口にした。 「それはどうも。別にうれしくないけどね」 一方、単純にすごいな、と代樹は感心していた。能力による鑑定士のガード、そこから の突進に盾の裏で用意していた奇襲の流れは、桜花の必勝パターンの一つだった。それを 初見で回避するとは。 しかも、マドンナと名乗る女性にはまだ余裕があるように見えた。 『マドンナの能力は、体の一部の変化。部位や物質に制約は無い。腕の刃物化と思ってい ると、たぶん痛い目をみる』 代樹は初めて第三者が見える局面で、手話で語りかけた。何かの意思疎通がある事は見 破られるが、さすがに内容の解読はされない。 『了解。というか、代樹は冷静すぎ!』 冷静で何が悪い、と代樹は思ったのだが、わざわざ反論はしない。後退した後、代樹は ただ傍観していた訳ではない。マドンナの能力を鑑定すると、ずっと部屋から逃げ出す隙 をうかがっていたのだ。 なにもマドンナを倒す必要はない。鑑定士を守りきれれば勝ちだ。それを理解している からこそ、代樹は逃げを打とうとしたのだが、隙を見出す事はできなかった。 「それにしても、よく仕掛けるタイミングが分かったわね。ヒントをあげた記憶は無いの だけど」 『自分で言ったとおり、あざとすぎる。最善の攻めに、最善の対応を返しただけだ』 「鑑定士曰く、あなたが言ったとおりだそうです」 格好よさげな台詞だが、その大半を省略して桜花は通訳した。 「やっぱり。自分でも虫が良すぎると思っていたの」 自嘲気味にマドンナは微笑んだ。 単純な理屈だと、少なくとも代樹はそう考えていた。 最初に想定するべき奇襲のタイミングは、入室時にいきなり攻撃を仕掛けるか、鑑定終 了直後に相手が油断した所を突くか。 しかし、入室時は相手の警戒のピークにあり、隙を突くという奇襲の用件は満たしづら い。鑑定終了直後は相手に能力を晒すリスクがある。 そのうえで結論を出すと、警戒のピークが過ぎた直後、それも何かの動作の途中で突如、 牙を剥くのが最善ではないか。 この理屈だけでは、相手が最善手を取る保証にならないが、代樹は自分自身の値踏みを 信頼していた。このマドンナと名乗る女性はかなり危険な相手であると。 「でも、あなた達が優勢に立てるのは、これでおしまい。油断はしないし、隙も見せない。 そして、なにより――」 マドンナはゆっくりと、ライダースーツの両袖を肩付近までまくった。あるいは攻撃の 機会かもしれなかったが、常人には無縁の威圧感が代樹と桜花を束縛していた。 まくった袖口に変化が生じる。肉体と周辺の空間が、歪に変形したかと思うと次の瞬間、 そこから第三、第四……多数の腕がすらりと伸びた。 「このまま、延々と手加減を続ける気は無いの」 さながら阿修羅、あるいは千手観音のような姿へと変化したマドンナはあでやかに微笑 んでみせた。 登場キャラクター 三島代樹 吉津桜花 マドンナ 上へ
https://w.atwiki.jp/nisioisinnbr/pages/31.html
試験開始 「“悪”——だね」 深夜の、市街地。 一つの建物の壁を背にして、零崎双識は呟いた。 似合わない背広に針金細工のような体躯を包み、似合わない銀縁眼鏡を装着し、似合わないオールバックにした髪を風に揺らしながら、零崎双識は呟いた。 「人を集めて殺し合いをさせる——まごうことなく、悪そのものだ。あの影谷……だったかな? あの男も死んでしかるべき『不合格』だったが、水倉神檎とやらもだね。こんなことを考える云々以前に、あんなに可愛い家族を大切にしない人間は『不合格』だ。 あの女の子……赤、赤か。ひょっとして《死色の真紅》、彼女もどこかにいたりするのかな? だとしたら是非お目にかかりたいものだね。うふふ。 ああ、でもそれより優先すべきものはたくさんある。うふ、感じる感じる、これは家賊がいるな。参ったね、私は平和主義者だからいいものの、他の零崎一賊なんて何をするか分かったものじゃない。 勿論皆は好きに行動すればいいんだけどね、私はどうしようかな? 私の可愛い家賊の中で、一体誰がここに連れてこられたのやら。私としたことが、あの状況とはいえ、家賊を一人も見つけられなかったなんてね。うふふ、妹がいればいいんだけど。 ……それにしても」 長い独り言をぷつり、と止めて、双識は首を傾げる。 顎に手を当て、心底不思議そうな表情で、自分に向かって語りかける。 「一体どうして、私は生きているんだろう?」 それは奇しくも、同じ時刻に別の場所で、同じ一賊の別の人物が呟いた言葉と酷似していた。 零崎双識は夏の前、死んだはずだった。 殺し屋に刺されて。 内蔵を貫かれて。 可愛い弟の傍で。 可愛い妹の傍で。 最悪で最善の死を迎えた。 偶発的で必然的な死を迎えた。 当然に完全に双識は死んだ。 零崎双識は、確かに死んだ。 双識は、それを覚えていた。 「うーん……生き返った? あながちそういうのも、ナシではなさそうだよね。わざわざ殺し合いを演じさせるために生き返らせるなんて、ご苦労なことだ。まあ今の所どうでもいいか」 自身の生存に関する疑問を、双識はあっさり投げた。 しかしそれは、けして彼が浅慮だということを示すものではない。単なる、優先順位の問題だ。 殺し合いの場に送りこまれたらしい家族のこと。 死んだはずの自分が生きていること。 どちらがより大切か、双識にとっては明確過ぎるほど明確だ。もとより彼には、家族のこと以上に大切な思考などありはしないのだ。 「別に、放っておいてもいいだろうけど……」 双識は、家賊のことをほとんど心配していない。 零崎一賊、《殺人鬼》。 双識が誰より信頼する家賊は、何より愛する家賊は、こんな状況に放りこまれたからといって命を奪われるような集団ではない。 だが。 この状況が酷く異常であること。そして長引き消耗戦となれば、一賊の誰もにとって不利であること。 そのことも、双識は同時に理解している。 「……ここは素直に、探しに行こうかな。人識君か伊織ちゃんか……どちらかがちゃんと《自殺志願》を持っているのかな? 伊織ちゃんのほうが可能性は高そうだけど。アスやトキがいたら、面白いことになりそうだ」 うふふ、と。 双識が笑い、 建物から背を離し、 家族の居場所を教える勘に従って歩き出そうとした、 その時。 ——それは、殺気だった。 殺意、あるいは戦意を明確に持つ気配だった。 それを感じた、と意識する前に、既に双識は振り向いている。 「……おや?」 横手の細道。 刺すような殺気に反したふらりとした足取りで、ぼんやりとした表情で、一人の少女が、現れた。 「……ゆらぁりぃ」 髪は、散切り。ぼろぼろに切り裂かれた、セーラー服。その制服が見覚えのあるものであることに、双識は気づいている。 「ゆらり……ゆらり」 手はなぜか、後ろ手。 そして彼女は右足首のやや上に、タイツの上から刃物で切ったような浅い傷を負っていた。乾き始めて間もないことが容易に分かるその傷は、生々しい傷口を晒している。 しかし、それ以外には何の外傷もない。 「その怪我はどうしたんだい?」 ゆらゆらと揺れていた少女が、止まる。 「……ぴたり」 一瞬の、静寂。 双識と少女は、向き合う。 「……一応、自己紹介、しておきます」 先に億劫そうに口を開いたのは、少女だった。 双識の質問は綺麗に無視された。 「あたし、西条玉藻ちゃん……です。人がいたから、来てみたんですけどぉ……今回って、ずたずたにして、いいんでしたっけ……?」 物騒なことを、少女——玉藻はさらりと口にする。 その物騒なことを簡単にやってしまいそうな雰囲気を、彼女は持っていた。 それは一歩別のほうへ踏み出せば。 零崎に為っていても、おかしくないような。 「何にも命令、ないってことは……好きにし」 玉藻はそこで一旦、「ゆらり」と呟いて休憩を挟む。喋るのは苦手らしかった。 「てもいいのかな。じゃあ……玉藻ちゃん、行きまあ」 「いやいやいや、ちょっと待った」 そのままストレートに不穏な結論へ至りそうだったので、双識は口を挟む。 その辺りこそ、彼が変わり者と言われる所以だろう。双識は、自称白い鳩のような平和主義者なのである。基本的には。 「……なんですかあ?」 玉藻の胡乱そうな声を浴びつつ、双識はやれやれと首を横に振った。 「全く……それが悪いと言うつもりはないけど、同じ女子校生とはいっても、子荻ちゃんとは全然タイプが違うな。君もその制服を着ているなら知っているんじゃないかな? 萩原子荻ちゃんのことだよ」 「……しおぎ、せんぱい」 「今何年生だったかな。私は結構仲が良かったんだよ、うふふ」 玉藻のぼやりとした目が、宙に止まる。停止。何か思い出そうとしている、ならいいのだが、表情からは何も読みとることができない。 一方で双識は、あの髪の綺麗な《策師》の少女を思い出していた。 常に別の場所、一つ上の場所に立っているかのような。 僅かばかり弟に似ている気もする、少女。 こんな状況にも関わらず、双識は思わず笑みを浮かべた。 やがて、玉藻の身体が再びふらりと揺れる。 「ええと……あなたは、先輩の、知り合いで」 「そうそう」 「あたしは、邪魔、先輩の……悪いことの邪魔、しちゃ駄目で」 「悪いことねえ。まあ、悪いといえばそうなんだろうね」 「子荻先輩はあ……あんまり、教えてくれないから……関係者は、駄目なんだっけ……」 首を傾げて、「ゆらあり」と玉藻は呟く。 「あなたは子荻先輩の知り合い」 戻った。 だが——それでも、玉藻の中では答えが出たらしい。 どこか残念そうに、彼女は身体を揺らす。 「……ゆらり。じゃあ、ずたずたにするのは、駄目……ぶーです。あたしもまだ、我慢できないってほどじゃ、ないですし……殺さないどいてあげます」 それは。 本当に、零崎であってもおかしくないような言葉だった。 しかし双識は、彼女がけして「妹」にはならないであろうことも、なぜか察していた。 ゆらぁりぃ、と。 玉藻は何の躊躇もなく双識に背を向けて、 「——待った、玉藻ちゃん」 呼びとめたのは、双識だった。 僅かに険しい顔をして、振り向く少女を見据える。 「……ちゃん付けで呼ばないでください……初対面ですよう」 「君、“それ”をどこで手に入れた?」 今度は、玉藻の言葉を双識が無視する。 先程とは全く逆のパターン。 それほどに。 双識にとって、それは重要な問いだったのだ。 背を向けた西条玉藻が、後ろに回した両手に持っていたものは。 一見してナイフのようなそれは。 双識の愛用の武器——否、元愛用の武器《自殺志願》。 それを、二つに分解したものだった。 しかし双識の問いは、玉藻が自分の武器を持っていたために出たものではない。それは確かに重要ではあるが、その程度のことで、双識は深刻になったりはしない。 玉藻が、“妹に渡したはずの武器”を持っていたからこそ——双識は尋ねたのだ。 最悪の事態をも、想定して。 「これはあたしのとこにあったんだから……あたしのです」 しかし玉藻から帰ってきた答えは、双識の不安をあっさりと打ち破った。 そんな嘘をつくような少女ではないだろう、と双識は判断し、それを信じることにする。 「ちゃんと……き」 更に言葉を続け、玉藻は休息。 既に双識の危惧していた事は回避されていたのだが、一応彼は最後まで話を聞く。 「れるかだって……自分で、試したんです」 それだけを言って。 玉藻は、再び双識に背を向ける。 その言葉の示す所に思い至ると、さすがに双識も驚きを禁じえなかった。ゆらゆらと歩み去る後ろ姿を見ながら、苦笑する。 彼女は、試したのだ。 《自殺志願》が武器として機能するかどうか——自分の足で。 双識は理解する。 玉藻が、“妹”にはならないだろうと思った訳を。 彼女は飽く迄、戦う。戦うために、存在している。 零崎一賊は殺人をする——《殺人鬼》 西条玉藻は戦闘をする——《狂戦士》 その違いは微細で、その違いは絶大だった。 双識は殺人鬼である。 マインドレンデル、《二十人目の地獄》などの異名を持つ零崎一賊の長兄であり、一賊屈指の実力者にして切り込み隊長だ。 双識には、玉藻を殺して《自殺志願》を取り戻すという選択肢も確かに存在した。他の零崎一賊ならば、ほとんどの者はそうするだろう。 しかし、双識はそれを選ばなかった。 理由の一つには、察するに玉藻もかなりの戦闘能力の持ち主であり、殺し合いをすれば双識も痛手は避けられないだろうという予測がある。双識はこんな序盤から、怪我をするわけにはいかないのだ。 そしてもう一つには、《策師》の少女の存在がある。 双識は、見ていた。 家族の誰をも視界に収めることはできなかったが、あの白い部屋で、双識は確かにあの髪の綺麗な少女を見つけていた。 彼は、興味があったのだ。 あの少女のフィールドに、この状況がどのように展開されるのか。彼女が何をして、何を成すのか。 そして、家族に害が及ばない限り、彼女の邪魔をしたくはなかったのだ。《策師》と出会えさえすれば、玉藻はおそらく重要な一つのピースになるだろう。 「……うふふ。まあ、《自殺志願》を持たない方が強いと言われる私だ。寂しいが、しばらくは預けておこう」 笑みを刻み、双識は呟く。 遠ざかる玉藻を、見つめて。 そしてふと、眉をしかめ、深刻な表情を浮かべた。 「それにしても……スパッツではなくタイツときたか。判定の難しい所だな」 繰り返して言うが、零崎双識は殺人鬼である。 マインドレンデル、《二十人目の地獄》などの異名を持つ零崎一賊の長兄であり、一賊屈指の実力者にして切り込み隊長だ。 【1日目 深夜 E-6から移動中】 【西条玉藻@戯言シリーズ】 [状態] 右足首付近に裂傷(軽傷) [装備] 自殺志願(二つに分解)@人間シリーズ [道具]なし [思考] 基本 ゆらぁりぃ 1 ずたずたにしたい……段々我慢できなくなるかも 「クビツリハイスクール」以前です。 西条玉藻のデイバッグ(装備を除き支給品が全て入っている)は、エリア内のどこかに放置されています。 時間は少し、遡る。 双識がしばらく背を預けていたまさにその建物。 二階の窓から双識と玉藻の姿を覗く、一人の少女がいた。 この二人に完全に悟られないでいることから、彼女もかなりの戦闘センスの持ち主であることが窺い知れる。 その少女は、小学生と言っても通用しそうな幼い顔に、驚愕の表情を浮かべていた。 (……どうして、ですか) 窓枠を掴む指は色を失い、 見開いた目を外へ固定して。 (どうして……玉藻ちゃんが生きてるですか) ——その少女は二月ほど前、西条玉藻を殺していた。 そっと、ジグザグに、殺していた。 落とした玉藻の首を、彼女は確かめていた。 それなのに、そんなことなどまるでなかったかのように、死んでなどいないかのように、玉藻は外に立っている。 全く、変わらない様子で。 言葉まで聞き取ることはできないが、確かに生きて、動いている。 (……おかしいです。ずっと、おかしいことばっかりです) 少女は、耐え続ける。 じっと、そこで耐え続ける。 気配を消し、意識を絞る。 息を潜め、口を噤む。 やがて——西条玉藻が道の一方へ消え、針金細工のような男がもう一方へと消えた時、少女は深く、ため息をついた。 「やっと行ったですか……」 うう、と大きく背伸びをして、少女は肩や首を回す。 そして辺りを見まわす。 特別な物は何も見当たらない、どこにでもありそうな小さなオフィスだ。 少女の足元には、全開になったデイバッグとその中身がぶちまけられている。少女が意図的にやったわけではなく、たまたまそうなってしまっただけだ。 「まずは……糸を探さなくちゃですね。それがなきゃどうしょうもないです。家探しはちょっと気が引けるですけど、特急事態だと思って頑張るですよ」 自分の気持ちを紛らわせるように、少女は声に出して行動を確かめる。 彼女の語句の用い方の間違いを指摘してくれる人物も、周囲にはいない。 少女は、《曲弦師》 糸を自在に操る能力の持ち主だが、不幸にしてデイバッグには曲弦糸に代わりそうな物が入っていなかった。 少女は、天井を仰ぐ。 「……師匠。潤さん」 呟くのは、先程の部屋で目にした、二人の知人の名だ。 やがて振り払うように首を左右に振り、少女は動き始める。 動き始めながら、呟く。 「一人は……寂しいですよ……」 ——ジグザグ、紫木一姫、行動開始。 【1日目 深夜 E-6】 【紫木一姫@戯言シリーズ】 [状態] 健康 [装備]なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜3)確認済 [思考] 基本 他人は信用せず、生き残る 1 使えそうな糸を探す 2 人殺しは厭わない 3 可能なら師匠、潤さんと合流する 「ヒトクイマジカル」直前です 時間軸の交錯に感づいたかもしれません 双識は、歩く。 家族の気配に向かって。 その足取りに、迷いはない。 「……うふふ」 歩きながら、笑う。 余裕の笑みを、浮かべる。 「私達は監視でもされているのかな? ちゃんと声が届いていないと、私はまぬけ以外の何者でもないんだけどなあ」 針金細工のような細く長い輪郭の影が、月明かりに照らされ、道に伸びる。 「それでも、まあ……お約束だろうしね。締まりも悪い。実技試験はもうちょっと先になるだろうけど」 双識は一際、笑みを深くした。 そして一人、天を仰ぐ。 「——零崎を始めよう」 【1日目 深夜 E-6から移動中】 【零崎双識@人間シリーズ】 [状態] 健康 [装備]なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1〜3) [思考] 基本 家族と行動を共にする 1 家族の気配に向かって移動 2 自分からは仕掛けないが、無論一賊に仇なす者は皆殺し 3 水倉神檎を「一賊に仇なした者」として認識 軋識(軋騎)のいる北、伊織のいる北東、人識・曲識のいる南、いずれかに向かっています。 008← 009 →010 ← 追跡表 → ― 西条玉藻 ― ― 紫木一姫 ― ― 零崎双識 020
https://w.atwiki.jp/kecak_taka/pages/13.html
テスト的
https://w.atwiki.jp/syssim09/pages/19.html
月曜2限 社会のための技術 7月20日までレポート提出 火曜2限 社会システム工学 7月28日火曜 水曜1限 情報工学 7月22日 水曜2限 プロジェクトリスクマネジメント 7月22日 数学2F レポート問題から6,7割出るらしい。No.6は注目。 木曜2限 安全学基礎 7月23日 システムモデリングⅢ(木3~4限) 7/16(木) 最終テスト 経済学基礎 7月24日金曜日(予定) 持ち込み可 ただし、問題量が半端なく多いらしく、平均点は56点とか。プリントをあさってると時間がなくなる システムモデリングⅡ(金3~4限) 7/17(金) 6章テスト 7/24(金) 最終テスト
https://w.atwiki.jp/cardxyz/pages/202.html
《D-HERO(デステニーヒーロー); ドレッドガイ/Destiny Hero - Dreadmaster》 [#h9e0705f] 効果モンスター 星8/闇属性/戦士族/攻 ?/守 ? 「幽獄の時計塔」の効果で特殊召喚した場合、 自分[[フィールド]]上の「D-HERO」と名のついたモンスター以外の 自分のモンスターを全て破壊する。 その後、自分の墓地から「D-HERO」と名のついたモンスターを 2体まで特殊召喚する事ができる。 このカードが特殊召喚された[[ターン]]、自分フィールド上の 「D-HERO」と名のついたモンスターは破壊されず、 コントローラーへの戦闘[[ダメージ]]は0になる。 このカードの攻撃力・守備力は、自分フィールド上のこのカードを除く 「D-HERO」と名のついたモンスターの元々の攻撃力を合計した数値になる。
https://w.atwiki.jp/yasasii/pages/92.html
https://w.atwiki.jp/t0944520022/pages/866.html
category.php
https://w.atwiki.jp/taki_vib/pages/4.html
https://w.atwiki.jp/sakidori/pages/20.html
1.試験の概要 保育士として一定の在職経験を有する方が幼稚園教諭免許状を取得する方策として幼稚園教員資格認定試験を実施しています。 この認定試験に合格した方は、都道府県教育委員会に申請すると、幼稚園教諭の二種免許状が授与されます。 2.試験スケジュール 3.試験実施大学 東京近郊 ※R2は幕張メッセ、R3はつくば国際会議場、R4は東京流通センター 4.受験手数料 20,000円(H30~) 5.合格率等について 文部科学省等の公表資料によると以下とのこと。 年度 (応募者数) 受験者数 合格者数 合格率 備考 H17 4,468 265 5.9% 幼稚園試験開始 H18 413 H19 1,467 319 21.7% 成績開示開始 H20 222 H21 803 75 年度 (応募者数) 受験者数 合格者数 合格率 備考 年度 (出願者数) 受験者数 合格者数 合格率 備考 H22 849 819 189 23.1% 受験手数料改定 H23 979 936 463 49.5% H24 1,338 1,303 490 37.6% 1次試験合格者に対する翌年度免除廃止 H25 1,252 1,227 310 25.3% H26 1,126 1,108 366 33.0% 一般教養廃止 H27 577 557 83 14.9% H28 368 350 89 25.4% H29 284 277 102 36.8% 会場が7会場に(1次のみの3会場廃止) H30 102 98 21 21.4% 受験手数料改定、会場が2会場に(5会場廃止) R1 88 82 39 47.6% 科目構成変更 R2 26 24 8 33.3% 会場が1会場に R3 30 17 7 41.2% 年度 (出願者数) 受験者数 合格者数 合格率 備考 平均 - - 40.7% 3か年(R1-R3)の平均 ※合格判定基準:試験区分の満点の6割以上
https://w.atwiki.jp/hamosakanokatekyo/pages/24.html
最近は口述試験を行う大学が増えてきています。その内容も高校の授業ではあまり行われない常識レベルの実験が出る場合が多いです。 口述試験が行われる大学でテスト内容に「実験観察」と書かれてある大学(大教大後期自然研究など)は以下の本を読んでおくといいでしょう。 中学と書いてありますが内容はなかなかなものです。